リレキショ
中村航の小説には不思議な魅力がある。難しい本を読んだ後の癒しに、よく中村航の作品を読む。 相変わらず本当に凄い感性の持ち主だなあと思う。『どこ2』とか、『55パーセントくらいの半月』とか、『ウルシバラ』とか、そういう思い付きはどこから出てくるんだろう。優しくて素朴な言葉たち。本当に好きだ。静寂の表現も凄くうまい。
ほんのわずかな描写で、深夜のガソリンスタンドの静けさと、原付のエンジンの音がちゃんとイメージできる。負の感情を抱く場面が全くないあたたかい物語。
中村航の思い出
高校生の時に『ヴィレッジヴァンガード』に置いてあった『100回泣くこと』を読んで中村航が好きになった。病気で彼女が死んでしまう「よくある恋物語」は好きじゃないんだけど、『100回泣くこと』は表紙の絵がすごく好きで思わず買ってしまった。高校生の当時、お小遣いはわずかで文庫本1冊買うのも結構なためらいがあったけど、躊躇せずに買って今では本当に良かったと思ってる。
『100回泣くこと』の中では当時、受験勉強で使っていた教材が出てきたのが嬉しかったり、馬力のくだりでニヤニヤしたり。ラストは山手線の中で読みながら激しく泣いてしまった。僕みたいな高校生が電車で小説を読みながらボロボロ泣いている様は異様だろうな。
今でも忘れられないフレーズが沢山あって、その優しい文章で強い印象を受けた不思議な小説。
それにしても、この手の話で「よくある恋物語」的な安っぽさが一切でてこないのは本当にすごいなぁ。
この小説で中村航が気になって、中村航の公式ホームページを見て「反省文に感動された」って書いてあったのが衝撃的だった。自分もいつか反省文を書く日がきたら中村航みたいに感動させる反省文を書きたいって思ったのも思い出。それにしても中村航はどんな反省文を書いたんだろう。
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いま、自分の本棚には中村航の文庫が6冊ある。
『100回泣くこと』
『僕の好きな人がよく眠れますように』
『あなたがここにいて欲しい』
『絶対最強の恋のうた』
『夏休み』 そして先週読み終わった『リレキショ』。
たった6冊だけれども、同一作者の本でこんなにたくさんもっているのは、ドストエフスキーと綿矢りさぐらい。まぁ、ファンを名乗るにはもっと中村航を読んでからにしろと言われそうだけど・・・。
改めて眺めてみると、どれも表紙がいい。タイトルもいいよね。あの表紙の綺麗な絵とタイトルで衝動的に買っちゃう人は多いと思う。
中村航の作品には本当によく癒される。優しい言葉づかいと、素朴なキャラクターたちで、読み終わった後は本当に、体から汚いものが全部でていってくれたような錯覚に陥る。メッセージ性を求めたり、幸せな日常の描写に「だから何?」って思う人には向かないけど、僕の好きな作家です。
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