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2015年12月1日火曜日

量子力学の参考書

量子力学の参考書のレビューです。熟読した本のみを紹介しています。


量子力学I,II(江沢洋)


はじめて量子力学を学ぶ人が手に取る本としてはベストな本です。非常に易しく丁寧に書いてあって理解しやすいです。シュレティンガー方程式がなかなか出てこないので少しじれったく感じるかもしれませんが、そこは耐えて、1章から順に読んでいくのが良いと思います。下巻までちゃんと読めたらそれなりに力がついていると思います(私は散乱問題とかは読んでないけど)。ちなみに下巻は扱う話題が高度なので決して易しくないです。
演習問題も豊富で回答もあるので自学自習に適していると思う。ただし、行列表示については何も書いてない。

量子力学〈1〉
量子力学〈1〉
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江沢 洋 小出 昭一郎
裳華房
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量子力学I,II(猪木 慶治/川合 光)


誰もが知る教科書。これが名著かどうかはさておき、非常に標準的な教科書であることは間違いないです。ただ、結構難しいので1冊目にこれを選ぶのは良くないと思います。
数学が難しい印象がありますね。だから量子力学の講義がはじまってわくわくしながらこの本を開いて心折れたりもしました。途中で群論なんかも出てきます。これ読んで「あーぜんぜん分からない、私は量子力学のセンスないんだー」なんてへこむ必要はないです。ここに書いてあることが演習問題を含めて理解できれば学部で学ぶ量子力学は十分に身についています。はじめのうちは、数式から数式の式変形とか結構悩むと思いますが、ちゃんと手を動かして計算することが大切だと思います。演習問題も豊富なので院試前におさらいするにはとってもいい本だと思います。それにしてもこの本、少し高くないか?2冊で1万…。

ちなみに同じ著者で『基礎 量子力学』という本があるけど、あれ読むなら、こっちを丁寧に読んだ方がずっと良いと思います。

量子力学1 (KS物理専門書)
量子力学1 (KS物理専門書)
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猪木 慶治 川合 光
講談社
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量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために(清水 明)

この本は「標準的な教科書」ではありません。わりと数学的な感じがします。後半のベルの不等式の話は非常に面白いです(そこまでたどり着くのは大変ですが)。私は、はじめに原理を提示してくれるので、量子力学に対するイメージが整理されました。数学についても、簡単な線形代数ぐらいしか要求されていないので、私はとても読みやすかったです。

量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ)
清水 明
サイエンス社
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量子力学I,II(小出昭一郎)


波動関数と状態ベクトルの関係をちゃんと知りたいと思って手に取った本です。第6章で非常によく整理されています。具体例がちゃんと載っているので分かりやすいです。「時間発展の演算子」とか行列表示とかハイゼンベルグ描像とかをよくわからないままにしている人はこの本の第6章を読むといいと思います。また、第8章ではスピンを扱っているのですが、角運動量やスピンの扱いになれてからこの章を読むととても楽しいと思います。ゼーマン効果、ラーモア運動の復習にも最適です。私は第6章と第8章しか読んでいないのですが、必要な数学はかなり丁寧に説明があって、全体的に初学者に優しい構成になっている印象が強いです。

量子力学〈1〉 (基礎物理学選書5A)
小出 昭一郎
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Quantum Mechanics and Path Integrals(P. Feynman, Alan R. Hibbs)


経路積分形式の量子力学の本。学部で学ぶ普通の量子力学をよく理解してから読むべきです。経路積分形式そのものは非常に興味深いし、本当に面白いけど、この本は誤植が多い。多すぎる。とんでもなく多い。こんなに誤植の多い本って他にあるのだろうか。正負が逆になってたり、次元が合わなかったりするのは当たり前で、ときたま本質的な間違いがあったりするから更に困ります。

この本には練習問題がたくさんついています。いい練習になる問題もあるけど、極端に難しい問題もある。とくに面白い結論が見える訳でもないのに鬼のような計算をするだけで「これやる意味あるの?」と思ってしまう問題もかなり多い(3次の摂動問題とか)。

一番おもしろいのは第4章。ここでは経路積分と学部で学ぶようなふつうの量子力学の対応を調べる。第6章で経路積分での摂動を(凄く雑な近似で)見るけれど、散乱問題が分からないと苦しい。

非教育的すぎるので自主ゼミ等のテキストにしては絶対にダメな1冊だけど、経路積分形式の量子力学は本当に面白いので、誤植を全部見つけるぐらいの気持ちでじっくり取り組めば得れるものは多いと思う。日本語版もあるけど、誤植が直っていたりはしない・・・。

Quantum Mechanics and Path Integrals: Emended Edition (Dover Books on Physics)
Richard P. Feynman Albert R. Hibbs Daniel F. Styer Physics
Dover Publications
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Statistical Mechanics:A Set of Lectures(Richard.P.Feynman)


ファインマンの書いた統計力学の本。あえて量子力学にカテゴライズしました。私はこの本の第6章しか読んでいません。第6章の第2量子化法の説明が世界で一番わかりやすく書いてある!。生成消滅演算子の導入にはこの本がベスト。講義で学ぶ量子力学が分かっていれば、第6章は簡単に読めるからぜひおすすめ。なお、邦訳もあるので好きな方で勉強したらよいと思います。


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