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2016年2月7日日曜日

レ・ミゼラブル(角川文庫)―ヴィクトル・ユゴー

読み継がれるべきだと強く信じられる古典がある。

レ・ミゼラブルはそんな小説の代表に思える。

人の価値観は時代と共に変わっていく。だから人の胸に響く小説というのも時代に応じて変わっていく。それは極めて自然なことである。ただ、事、この小説においては時代を問わず、人間が人間としての本質を見失わない限り、永遠に読まれ続けるのではないか。

つまるところ、この小説に人間が胸をうたれなくなる時代が来たとしたら、それは人間が人間でなくなったときでさえあるような気さえするのだ。

私は2012年のミュージカル映画『レ・ミゼラブル』ではじめてこの物語と出会った。一緒に映画を観た人が帰りに「ジャンヴァルジャンのように生きてみたいものね」と言ったのが記憶に残ってる。

でも、ジャンヴァルジャンのように生きるのはとても難しい。

貴方の家に前科者の浮浪者が突然やってきたとして自分の家に泊めてあげられるだろうか。
誰かが自分の代わりに終身刑を言い渡される瞬間に、自分が当人だと言い出せるだろうか。

自分は旅先の途上国の路上で商売をしている貧困の底にいるような少年に、値切って値切って値切りまくって、始めの価格の1/3の値段でチェスボードを買ってその話を自慢げに他人にする人間なんだ。そういう自分を見つめ直させられる。

それにしても、ああ無情、なんていいタイトルなんだ。




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